いま,ものづくりの現場ではディジタルモックアップと呼ばれるコンピュータ内部の 模型を使って設計作業が進められる.3次元CADの普及により,手軽に高度なグラフ ィックスの画像が得られるようになった.その一方で,設計や生産の過程では,制約 条件を満たす解を探す作業をどこまでコンピュータが支援してくれるのかという問題 がある.この問題を,プログラミングの視点からとらえ,制約の管理の仕方,変数の 依存関係の記述,コンピュータで扱うプランニングの基本操作について考察する.
自然の中には、様々な対称性を持つものがあります。例えば、静的な対称性の例として,花や鉱物・雪の結晶など、動的な例として,ベナール対流やクウェット・テイラー流れのパターン変化によって対称性が喪失することが知られています。また、一般に我々は対称性が存在すると「美しい」と認識し,構造物の設計者は美しいデザインを設計目標とします。しかし,この対称性の美しさとは裏腹にその系の支配方程式の解を求めるときに,解の分岐や多重根によって数値不安定となることがあります。
近年構造工学の分野では,この問題に対して群論的分岐理論に基づくブロック対角化法(BDM)によって,その数値安定性および並列解析など数値計算上の利点が示されています。BDMはあらゆる群に対して成り立つ理論ですが,ここでは、二面体群$D_n$を持つ対称構造物におけるBDMについて概説し,この構造解析例(FEM)を中心に話題を提供したいと思います。
図形に関する大域的な問題、たとえば図形をユークリッド空間に埋め込む問題等においては、その図形に付随するベクトル束の問題に帰着される場合が多い。そこで、ベクトル束に関連した次の三つの問題についてのお話をする。
(1)ベクトル束を拡張する問題
(2)ベクトル束の1次独立な切断の最大個数を決定する問題
(3)ベクトル束の特性類を具体的に記述する問題
Rapidly growing functions serve as scales for measuring big complexities in different fields like Ramsey theory, the theory of well-quasi orders, term rewriting and proof theory. We expose the classical definitions and some applications of rapidly growing functions. Further we classify several modes of defining rapidly growing functions. In one example we apply Polya-style graphical enumeration.
画像処理理論の1つmathematical morphologyは,画像に含まれる物体形状に対す
る各種の操作を定量的に記述する手法です.Mathematical morphologyでは,構造要
素という小さな図形を考え,画像に対する各種の操作を画像と構造要素との基本演算
に帰着させることによって,各種の画像処理手法を記述しています.私たちは,画像
を構造要素によって変化させるのではなく,逆に,画像と構造要素との演算結果があ
る特定の形になるように構造要素の方をうまく変化させることで,最適化された構造
要素に画像の特徴を表現させる研究を行っています.
今回の講演では,mathematical morphologyの考え方の概略と,上の手法を応用し
たテクスチュアのモデリングについてお話しします.テクスチュアとは,布地の表面
の画像のように,写っているものの形よりも模様のほうが重要であるような画像のこ
とです.その模様がどのようなテクスチュアであるかを少ないパラメータで記述する
のが,テクスチュアのモデリングです.
情報化社会における特徴的なストレスにテクノストレスがある.テクノストレス は,「人間とコンピュータとの関係がゆがんだ状態」であると定義され,テクノ不 安症とテクノ依存症の2つからなる.ともにコンピュータとの際限のない関係が, 主要な原因であると考えられているが,その病態は大きく異なる.現在は,コンピ ュータ不安症よりもコンピュータ依存症に,中心的な問題が移行しつつある.今回 のセミナーでは,テクノストレスとは何か,不安症と依存症との相違,これから生 じるであろうと考えられる問題について,概説する.
自然科学・技術の世界におけ る計算機の発達によるディジタル的な信号の取り扱いに関する研究は進展が著しく, 例えば音信号を取り扱う分野においても,現在の音楽 CD (コンパクトディスク) は原理的に言って,音信号を時間軸に関しては 44,100 Hz でサンプリングを行い, 振幅に関しては 16 bit で量子化して 2 進数に変換し, CD 面に凹凸で記録を行っている. こうした音信号データは 16 個の 1 あるいは 0 から成る一次元 ビットパターンの時間的連鎖とみなすことができ,また 16 個のセルの状態が 時間発展を行うという一次元セルオートマトン系とみなすことができる. 今回のお話は,これを「 2 状態 3 近傍セルオートマトンのルール (全体で 2^8 = 256 通りしかない)」 で記述し,その圧縮記述の概略とそれによる再現性の評価を行い, 更にこうした単純なルールによる複雑なダイナミックスの記述能力を 調べようとする研究である. こうした記述・再現方法が最適化された場合には大きなデータ圧縮記述が可能となる と共に, コルモゴロフの complexity の意味で記述対象となった音声あるいは 音楽の持つ複雑さの評価になっているかもしれない.
量子コンピュータは、(もし完成した暁には)スパコンで10兆年の暗号解読計算を1時間でこなすと言われています。大まかには、量子計算は R.P.Feynman によって着想され1985年に D.Deutsch によって量子コンピュータの基礎が築かれ、1994年に P.W.Shor により素因数分解の高速な量子アルゴリズムで量子コンピュータの重要性が認識され、1997年にL.K. Grover の量子検索アルゴリズムで量子計算が広がりを持ったと考えられます。さて、現在使われているコンピュータの殆どは、ノイマン型と呼ばれるコンピュータです。ノイマン型は様々なボトルネックがありまして、なるほど近年のパソコンに代表される計算機の発展ぶりは目を見張るものがありますが、しかしシリコンチップの集積度は近い将来限界に達するでしょうし、計算能力にしても同様でしょう。限界を乗り越えるために現在もっとも活発に研究されている代表的な1つが、世界の記述が量子力学で行われるように、量子力学に基づく計算機(量子コンピュータ)の研究です。それらの研究を通じて容易にわかるのは、量子コンピュータは私達が現在使っているコンピュータを駆逐するものではなく、互いに補い合うものであることです。量子コンピュータの性能は、キュービットの数で表せられます。一時は、実際に作れるのか現実的に意味のある計算の為には数十キュービットが必要なのですが、最近5キュービットの量子コンピュータが出来ています。ここでは、データベース検索での Grover アルゴリズムの周辺を探ります。
近年、これまで応用とは無縁であった数論、代数幾何学、可換環論等の、抽象 代数学の延長線上にある分野が、暗号理論(特に公開鍵暗号)、符号理論、球面 充填問題、Groebner 基底の理論(線型計画法、計算機代数、符号理論、組合せ 論等へ有用)等へ応用され、応用代数学という新しい分野として発展している。 今回の講演では、その中から暗号理論の概観を説明し、素因数分解の難しさや 離散対数問題を一方向関数として利用することによる公開鍵暗号について概説 する。特に、RSA 暗号、素因数分解アルゴリズムの現状、離散対数を利用した 暗号系等をとりあげ、時間が許せば最近のトレンドである、代数幾何を用いた (超)楕円曲線暗号についても紹介する。
振動は現実世界(自然的であると人為・人工的であるとを問わず)における 基本的な現象である。振動を生起させるメカニズムを解明し、必要な振動は 保存し持続させ、また不必要な振動は抑制し除去することを可能ならしめる 技術の開発が人類にとって極めて重要な課題であることは、科学・文明史が 示している。数学から「振動」を見る微分方程式の振動理論 (Oscillation Theory of Differential Equations)は, 微分方程式の解を振動性に焦点を当てて詳細に解明し、得られた知識と情報 を解の全体構造を解明する拠所にしょうとするものである。ここではある非 線形 Sturm-Liouville 微分作用素を含む2階常微分方程式とその一般化と 考えられる非線形常微分方程式系に対して振動理論を展開する。
特異二階線形常微分方程式の理論によれば, 境界の近くで方程式の特異性が適度に強いと, すべて解が境界で$0$になるという現象が起こり, 境界で$0$という制約条件は意味を失ってしまいます. しかし,この場合にも,それらの解の中で 最も速く$0$に近づく解の存在が知られており, その解を主解 (principal solution) と呼びます. 主解は,本質的には一意であり,特異性の弱い 場合の零境界条件を満たす解の一般化である だけでなく,特異二階線形常微分方程式の 理論において重要な役割を果たしています. この主解の概念を非線形の方程式に導入 しようという試みは殆どなされていないよう に思われます. この度お話しさせて頂きますのは, $p$ を $0 < p < 1$ なる定数,$q(t)$ を $(0,1)$ で 連続な恒等的には$0$ではない非負関数とし, 劣線形の境界値問題 $$ \mbox{\rm (E)} \quad u''(t) + q(t) u(t)^{p} =0 \quad (0 < t < 1) \quad u(0)=u(1)=0 $$ に対して,形式的にではありますが,主解の 概念を導入し,その正値主解が(存在するなら) 一意的であることです. この一意性は,残念ながら,主解の概念を経ずに 得られている従来の結果を越えるものとは言えません. しかし,主解の概念を非線形の方程式にも導入する ことが単なる一般化ではないことを示唆しています. そのことをお伝え出来ればと思っています.
生命保険は、数十年という長期にわたり、人の生存や死亡、疾病などを対象に 保険金などの支払を保障する制度です。そのためには、生命保険会社の経営が健 全であることが必要になります。経営が健全であるためには、保険料(掛金)が 適正であることが必要です。過去の統計をベースに死亡率などの保険事故発生率 を作成し、経済環境などを考慮した上で保険料を設定します。 そこで、生命表からどのように保険料を設定していくかを中心に説明し、生命 保険実務上での計算方法を紹介します。