数理情報科学セミナー 2001


4 月 18 日 原田 耕一(広島大学・総合科学部・数理情報科学講座・教授)
グラスマン代数を用いたデザイン曲線生成

物体デザインで広く用いられている曲線は B-spline であるが, この B-spline の特別な場合の曲線としての Bezier 曲線は関数形が単純なの で良く知られている. しかしながら,Bezier 曲線上の点を生成する de Casteljau アルゴリズムは 余り知られていない. この講義では de Casteljau アルゴリズムの概略を述べると共に, グラスマン代数の概念によって de Casteljau アルゴリズムが明解に説明で きることを知り, 力学における重心の概念とデザイン曲線の制御点との関係についての理解を深める.

5 月 23 日 阿賀岡 芳夫(広島大学・総合科学部・数理情報科学講座・助教授)
平面と球面のタイリング

街を歩いていると壁や歩道等、いろいろな所にタイル張りを見かけます。 世の中には種々のタイプのタイル張りが存在しますが、この講演では このタイル張りについて数学的な見地からのお話しをする予定でいます。 タイル張りには、素人にも理解できる一見簡単そうな問題なのに未解決 という問題が多く残されていて、現在も活発に研究が続けられています。 今回は、その中で特に1種類の凸多角形から構成されるタイル張りについて お話しします。まず平面の場合の現状を解説した後、球面の場合について 上野裕佳子さんとの共同研究の成果を図を交えながらお話ししたいと 思っています。

6 月 27 日 Ralph Greenberg (University of Washington)
Mordell-Weil groups of elliptic curves

We will consider an elliptic curve E defined over the field Q of rational numbers. If K is any finite extension of Q, then the set of points on E rational over K is known to be a finitely generated, abelian group E(K). This talk will discuss the behavior of the rank of E(K) as K varies over certain families of fields. In certain cases, one finds that there is some regularity in the behavior of this rank. We will discuss one example where the rank seems to behave in a rather unexpected way.

7 月 4 日 新井 敏康(広島大学・総合科学部・数理情報科学講座・教授)
集合論の証明論

数学基礎論 = 数理論理学の一分野である証明論は,主に数学での証明 自身をその研究対象として,公理系での証明可能性の限界等を探っている. ここでは,対象となる公理系として集合論を考え,そこでの整礎性の 証明可能な範囲を確定した結果を紹介する.
キーワード
不完全性,帰納的,順序数,集合論, 巨大基数とその帰納的類似物,反射的順序数,帰納的定義の最小不動点

7 月 31 日 古島 幹雄(熊本大・理学部・教授)
C^nのコンパクト化の研究をめぐって

20年近くC^nのコンパクト化の研究を行っていますが、研究すれば するほど分からない点が次々と現れ、研究は収束するどころか発散 しつつあるように思えます。それでも、このコンパクト化の問題から 離れられずにズルズルト今日まで至っています。 今回の講演では問題とその背景および得られた結果、今後の課題等について なるべく平易に解説したいと思っています。

10 月 24 日 原田 研介(工学研究科・複雑システム工学専攻・助手)
ロボティクス・メカトロニクスの基礎と応用事例

ロボットシステムやメカトロシステムは,センサ,アクチュ エータコンピュータより構成される.本講演では,それぞれ に対して,どのような基礎的技術があり,またその基礎的技 術がどのように応用されているかについて述べる.具体的に は,ビジョンセンサや関節角度センサの情報がコンピュータ に取り込まれ,センサの値を望みの値にするように,コンピ ュータはアクチュエータを駆動する信号を出力する.これら の事項を分かりやすく,ビデオを交えながら講演する.

12 月 5 日 宇佐美 広介(数理情報科学講座・助教授)
線形常微分方程式の解の零点

一般に関数の値が丁度ゼロになる点をその関数の零点といいます。線形常微 分方程式の解の零点について考察することは応用上のみならず理論的にも重要なテー マです。  標題にある「Picone 恒等式」(大学1年生でも証明できる!)を使うと与えられた 線形常微分方程式の解の零点間の距離とかを見積もったり出来ます。また「Riccati 方程式」(大学1・2年生の講義で出てくるかも?)を使って与えられた線形常微分 方程式の解の零点が有限個かどうかを判定するお話しも紹介します。

1 月 16 日 税所 康正(工学研究科・複雑システム工学専攻)
反射壁確率過程 --- Skorohod 問題について ---

Skorohod 問題によって表現される反射壁確率過程の話をします. Skorohod 方程式の紹介と解の存在と一意性について, 応用と計算機によるシミュレーションについて等関連する話題を取り上げる予定です.

1 月 23 日 足達 慎二(早稲田大学・理工)
Concentration Compactness Principle とその楕円型方程式への応用

偏微分方程式の研究において変分的アプローチは非常に有効であり,古くから様々な方面 への応用が研究されてきた. 特に Ambrosetti-Rabinowitz により示された Mountain Pass Theorem が引き金となり, minimax 理論の楕円型方程式への応用はめざましい発展をとげている。 本講演では全空間上で定義されていることにより対応する汎関数が Palais-Smale 条件 を満たさない楕円型方程式に対して,正値解の存在を議論する. 特に非線型項が空間変数に依存する方程式に対して, 無限遠で $0$ に減衰する正値解の存在を Concentration Compactness Principle を用い て示したい.

2 月 6 日 三木 隆史(工学研究科・情報工学専攻・M 1)
logistic 写像のシステムパラメータ変化による動力学的特性

一次元写像 logistic 写像は,システムパラメータの値に応じて, 一定の過渡時間後に初期値に依存せず,固定点,周期解, カオスといった現象を生み出すことが知られている. 本講演では,logistic 写像のシステムパラメータに対し, 時間依存性を導入し, 自励系から非自励系に拡張した logistic 写像の応答特性を議論する. そこには,オリジナルの logistic 写像には見られなかった, 異なるカオスアトラクターが共存するといった現象が観測されること, そのアトラクターベイスンにフラクタル的構造が見られること等を 紹介する予定である.


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