位相幾何学における研究対象の図形は多様体、すなわち、 局所的にはユークリッド空間の形状をしている滑らかな図形 が主なものであります。多様体に対する大域的な問題、たと えば、3次元多様体は4次元多様体の境界になっているか 否かの問題は、3次元多様体に付随して定まるベクトル束の 問題に帰着されることが分かっております。また、多様体を ユークリッド空間の中にはめ込みむ問題についても同様であ ります。この様なことから、小生はこれまで、ベクトル束に関 連する問題の研究に関心を持っておりました。今回のセミナ ーでは、特に「多様体上の線形独立なベクトル場の研究」、 「多様体の特性類の研究」、「多様体上のベクトル束をより広 い多様体上へ拡張する研究」に関して、これまでの小生のあ ゆみについて、少しお話をさせていただければと思います。
19世紀初頭のドイツにおける大学改革論議のなかで、アカデミック・フリーダム(学問の自由)という概念が確立した。アカデミック・フリーダムには、大学教師は(自らの知的関心にそくして)何を研究してもよく、その研究成果に基づいて何を講義してもよいという意味の「教授の自由」と、学生は(自らの知的関心にそくして)何をどこで誰から学ぶかを自由に決定できるという意味の「修学の自由」を含意していた。この二つの意味のアカデミック・フリーダムが、ドイツ大学の発展を促したと考えられている。一方、アカデミック・フリーダムが強調された結果、大学が一般社会から遊離し、「学問のための学問」を追求する「象牙の塔」になってしまったとの批判もなされてきた。
20世紀末における冷戦終結に伴う経済社会のグローバリゼーションと、国家財政の緊縮に伴うニュー・パブリック・マネジメント(NPM)の進展は、大学にアカデミック・キャピタリズム(大学資本主義)を育みつつある。政府からの財政支援が減少する中で、大学が全体として、また学部・学科レベルで、さらには個々の教員レベルで、学生獲得、資金獲得に努めなければならなくなったからである。
大学の理念として両極端にあると思われる、アカデミック・フリーダムとアカデミック・キャピタリズムについて考えてみたい。
排中律をもたない論理は構成的論理とよばれるています。また構成的論理にお
いては、証明を自然にプログラムと解釈できることが知られています。
A(x,y) を入力 x、出力 y に対する入出力関係を表わ論理式と考えると、
<x,y,A(x,y)> はプログラムの仕様と考えられます。また ∀x∃yA(x,y) は任
意の入力に対して、仕様を満たす出力の存在を (仕様の整合性) 保証する論理
式と考えられます。
証明とプログラムの対応により ∀x∃yA(x,y) の証明をプログラムと考えるこ
とにより、x=a に対する計算結果から A(a,b) を成立させる b を得ることが
できます。すなわち、仕様 <x,y,A(x,y)> を満すプログラムの作成が仕様の整
合性を証明することにより可能となります。このようにして得られるプログラムは、
自動的に仕様を満たしていることが保証されています。
ここでは、証明とプログラムの関係について、自然演繹論理体系、ラムダ計算、
型理論などを通して概略をお話します。また、仕様の整合性の証明からプログ
ラムを得る別のアプローチや、排中律の取扱いについても時間があればふれま
す。
「1+2+3+4+...+98+99+100を計算してください。」
この問題に対して一つずつ数を足していくのはかなり面倒です。実は、(100+1)*50と計算すればすぐに答えの5050を求めることができます。それでは、1^2+2^2+3^2+...+100^2や1^3+2^3+3^3+...+100^3、さらに一般の自然数kに対して1^k+2^k+3^k+...+n^kはどうなるでしょう?そこで登場するのが、ベルヌーイ数B_kです。スイスのヤコブ・ベルヌーイ、日本の関孝和、インドのシュリーニヴァーサ・ラマヌジャンら(もっといるはず)が独立して発見した有名な有理数たちです。
さて、かの天才数学者にしてアルゴリストであるオイラーもリーマンゼータ関数の値に関連してベルヌーイ数を与えています。いくつかの文献で k=26(あるいは k=30) まで計算していたということが書かれていますが、私はずっと「オイラーはそこまでしか計算していなかったのか、妙だなあ」と思い続けていました。しかし、事実は違いました。オイラーは``Remarques sur un beau rapport entre les s\'eries des puissances tant directes que r\'eciproques'' (英題 ``Remarks on a beautiful relationship between series of powers and reciprocals of powers'')の中で、k=34 まで計算していたのです。これでずいぶんほっとしたのですが、なぜほっとしたのか、またこのベルヌーイ数に関連した珍しい素数を見つけようとする努力についてお話します。
今回は教養課程の微積分に関する話題です。新しい結果と言うも
のではありません。ぼくの素朴な疑問から出てきた話題です。
有界閉区間上での(連続)関数のリーマン可積分性を証明するには少なくとも二通
りの方法があります。一つは「上積分」と「下積分」との一致を示すもの。もう一つ
は、どのような分割に対しても分割の幅を限りなくゼロに近づけるとリーマン和が一
定の実数に収束することを示すものでしょう。
でも前者は「上限」とか「下限」という概念を用いねばならないので、大学1年次
生には少し大袈裟だと思います。(実は絵を描いて考えるととても分かりやすいので
すが。)一方、後者は物理学や工学に現れる諸量の定義がそのまま反映してるような
考え方で、ぼくはこっちの方が大学一年次生には親しみやすいのではと思います。た
だ、教養課程の微積のテキストには後者の立場に立った証明がほとんどありません・
・・何故なのだろうか?というのがぼくの疑問でした。
それで、今回のお話ではこの後者の考え方にたって有界閉区間上の連続関数のリー
マン可積分性を証明してみます。基本的には多項式の可積分性を示すことが出来れ
ば、「ワイエルシュトラスの多項式近似定理」により、連続関数の可積分性が導ける
と言う筋書きです。・・・、とここまで書いたら気がつきましたが、この方法も結構
大袈裟になってしまってるようです;「ワイエルシュトラスの多項式近似定理」は大
学1年次の標準的なカリキュラムには無いはずですから。しかし、この定理はとても
分かりよくかつ便利な定理ですから、皆さんも知ってて損は無いです。従って今回の
セミナーはやっぱりこの話をさせていただきます。
フラクタル図形は,自己相似性を持つため,パターンの繰り返しとしての``対称性 ''をもっている.
本講演では,これを検証するため,位相的等質性について調べることにする.「メンガー曲線は位相的に等質だが,シェルピニスキ・ガスケットは位相的に等質にならない」こと等を見ていく中で,何が本質であるかについて議論する.
ここで,位相的に等質であるとは,「任意の2点について,その1点をもう一つの点に写す同相写像があるとき」と定義される.これは,位相力学系理論と密接に関係しており,現在関連する問題が盛んに研究されている.ここでは,そのうち,「どのようなフラクタル図形が極小写像を持つか」というゴットシャークの問題を取り上げ,その進展についても紹介する.
計算幾何学の応用分野といえば,まず,画像処理,グラフィックス, CAD,ロボティックス,地理情報システムなどが思い浮かぶと思います. もちろん,これらの直接的に幾何学データを扱う応用分野では, 計算幾何学のテクニックが重要であることはいうまでもありませんが, 近年,計算幾何学のテクニックはもっと一般的な(非幾何学)データ を扱うデータベースの分野でも(ちょっと意外な)活躍をしています. とくに大量の情報から役に立つ知識を発掘するデータマイニング分野では, 問題を幾何学的に捉えて,幾何学的に処理することが有効な例が数多く 存在しています.今回のセミナーでは,そんな計算幾何学を利用した データマイニングアルゴリズムを紹介する予定です.