辻は,複素解析関数の研究において,実解析的な手法も有効であること
を示した。その後,フランスの数学者を中心として,実解析的な方法は
ポテンシャル論としてまとめられるようになった。
ポテンシャル論研究において,日本の数学者の貢献も大きいものがあり,
とくに,大津賀は世界的に著名である。
この講演では,ポテンシャル論の入門から始めて,関数の境界値に関する
Fatou の定理について解説する。
初等幾何学には様々な,そして驚くように美しい定理があります.補助線を 引きながらそれらの事実に証明を与えてゆくのは数学の醍醐味の一つといって よいでしょう.しかし,初等幾何学にはそのような定理があまりにも多く ありすぎて,逆に雑多な事実をバラバラに積み重ねた,定理の倉庫といっても よい面のあることも確かです.初等幾何学を単なる事実の寄せ集めとしてでは なく,何本かの筋の通った系としての見通しを与える,そのような試みの一つを 「不変式」という単語をキーワードにしてお話しする予定でいます。
スポンジや地中のように小さな孔が数多くある物質の中を流れる 流体を考える。この問題はある偏微分方程式で記述でき、流体の存 在する場所と存在しない場所の境目が出現することが知られている。 この境目を移動境界と呼び、この挙動の解析が興味の1つである。 解析の手法として、コンピュータによる数値シミュレーションを考 察しよう。シミュレーションのために数値解法を開発する必要があ るが、特に移動境界が融合するときなどには困難なことが出現する。 この講演では移動境界を追跡するための、特異極限の手法を使った 解法を示すことを目的とする。
組込み型コンピュータは多くの製品に利用され、
ますます応用範囲を広げている。また、最近の組
込みCPUは高度な処理もこなせるようになっている。
今回のセミナーでは、組込みCPUを一般のCPUと
比較し、その機能・性能について概説し、さらに、
それに用いるOSやソフトウェア開発の課題について
考察する。
ここで考える解析的コンパクト化はコンパクトな複素解析的曲面$M$と,これに
含まれるコンパクトな複素解析的曲線$C$の組$(M,C)$で以下の意味で
``minimal''なものである.(イ):$M\setminus C$が
$\mathbb{C}^2/\mathbb{Z}_n$と双正則である.
(ロ):曲線$C$の特異点は皆,通常2重点.(ハ):曲線$C$の既約成分で自己交点数
が$-1$のものは他の既約成分と3点以上で交わっている.
商特異点$\mathbb{C}^2/G$の他の場合と異なって,離散群$G$が巡回群
$\mathbb{Z}_n$の場合はこのようなコンパクト化が一意的に定まらない.
そこで,その分類を考えようというのが今回のお話の主旨である.
'55〜'80 にかけて,京都学派を中心に線形双曲型方程式に対する初期値問題の研究が盛んであった.ちょうどこの頃,私は学生時代,研究者の仲間入りした頃である.この問題は,1932年のHadamardの講演「Le Probleme de Cauchy」に端を発している.これは,偏微分方程式の初期値問題は,常微分方程式のそれと違って,解の存在,一意性や初期データに対する解の連続性が言えないので,この様なことが言える(これをHadamardは「適切」と呼んだ)偏微分作用素は何かという問題である.一方 50年代から70年代にかけ「特異積分作用素」「超関数理論」「擬微分作用素」が現れ発展し,線形関数解析は成熟していった.それと共に,Hadamardの問題が少しずつ解明されてきた.しかし,現在なお本質的な問題は未解決である.この問題について,話してみたい.
フラクタル理論は図形解析にその応用が期待される数学理論である。し かしながら、現時点では1次元図形への応用が主である。他方、図形処理 研究は画像理解、データ圧縮など多くの技術課題を包含し、種々の数学 的な手法を積極的に取り入れることで有名な学問分野であるといえる。 実際、古典的なフーリエ解析からウェーブレット理論まで様々な手法が 導入され、広範な研究が繰り広げられてきた。本日のセミナーではフラ クタル理論を2次元的な問題へ適用する試みとして、効率よく画像をコー ド化するために、どのようにフラクタル理論が応用できるか考える。 1992年に発表され、広く引用されてきた論文を例として引用し、数学理 論と技術応用との差を埋めることの具体例を学ぶ。